この記事について
「ナンピン 最強」「ナンピン 必勝法」——実際に検索すると、この言葉が候補に並びます。
この口座がやっているのは、まさにナンピンです。50銭下がるごとに買い下がり、損切りをしない。7か月続けました。だから「最強かどうか」に、一般論ではなく明細で答えられます。
先に結論を書きます。ナンピンは強くも弱くもありません。支払いを後ろにずらしているだけで、請求書はその間ずっと立ち続けます。この記事は、その請求書を1円単位で開示するものです。
以下の口座実績は、特記がない限り2026年8月8日時点の固定スナップショットです。最新値は記事上部の自動更新パネルと運用日誌で分けて公開しています。
この記録はOANDA証券のMT5口座で取っています。よく似た注文条件を持つ国内口座として、MT4対応のFXTF
やヒロセ通商(LION FX)
があります。 どちらも1,000通貨から発注でき、注文時に決済指値を付けられます。FXTFはMT4、ヒロセ通商は独自の取引ツールです。
ナンピン(買い下がり)とは何か
買った値段より下がったところで、さらに買い増すことです。平均取得単価が下がるので、元の値段まで戻らなくても含み損が消える——これが仕組みの全部です。
この口座の場合はこうなっています。
- 50銭下がるごとに、買い指値を1本置く
- 買えたら、その値段の+50銭に決済指値を置く(運用の形)
- 損切り注文(S/L)は一度も置いていない
つまり「下がったら買う」を機械的に繰り返しているだけで、相場観は入っていません。
7か月の結果:見出しと請求書
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 確定損益(決済140本) | +81,399円 |
| 含み損(保有11本) | −38,167円 |
| 差し引き | +43,232円 |
決済した140本のうち、スワップを含めてもマイナスだったのは2本だけです。勝率にすると98.6%になります。これだけ見れば「最強」に見えます。
しかし同時に、−38,167円の請求書が立っています。確定した方だけを見せれば天国、含み損だけを見せれば地獄。どちらも同じ口座の同じ日の数字です。
保有11本の中身を全部出す
「含み損−38,167円」という合計だけでは、何が起きているか分かりません。1本ずつ出します(2026年8月8日時点・市場価格157.657円)。
| 建値 | 数量 | 含み損 |
|---|---|---|
| 162.998 | 0.01 | −5,341円 |
| 162.492 | 0.01 | −4,835円 |
| 162.009 | 0.01 | −4,352円 |
| 161.505 | 0.01 | −3,848円 |
| 160.976 | 0.01 | −3,319円 |
| 160.502 | 0.01 | −2,845円 |
| 160.497 | 0.02 | −5,680円 |
| 159.501 | 0.02 | −3,688円 |
| 158.999 | 0.02 | −2,684円 |
| 158.500 | 0.02 | −1,686円 |
| 158.020 | 0.02 | −726円 |
価格差の合計は−39,004円。ここに未収スワップ+837円が乗って、口座表示は−38,167円になります。
この表がナンピンの正体です。高いところで買った玉ほど深く沈み、直近で買った玉ほど浅い。上7本(160円台〜163円台)だけで−30,220円、全体の77%を占めています。介入前の高い水準で買った玉が、そのまま残っているということです(含み損の内訳)。
ナンピンが「最強に見える」仕組み
勝率98.6%という数字は、腕前ではありません。損切りをしなければ、負けは確定しないという会計上の性質です。
- 上がった玉は決済される → 確定利益として記録に残る
- 下がった玉は決済されない → 含み損として口座の中に残るだけ
- 集計対象が「決済されたもの」だけなら、負けはほとんど出ない
つまりナンピンは、勝ちだけを確定させ、負けを未確定のまま保有し続ける装置です。強いのではなく、成績表の作り方が偏っているだけです(勝率が高いのに増えない理由)。
買い増しの幅・数量・資金を一緒に見る
ナンピン幅(何銭下がったら買い増すか)だけでは、口座の負担は決まりません。買い増し間隔・保有本数・1本の数量・口座資金を一緒に見る必要があります。以下は数量だけを変え、他の条件を固定した仮定の計算です。幅や相場の経路が重要でないと実証したものではありません。
2026年8月8日時点の状態はこうです。
- 必要証拠金 100,900円
- 有効証拠金 1,015,352円
- 証拠金維持率 1,006%
- 余剰証拠金 914,452円
維持率1,006%はこの時点の値で、将来の損失やロスカット回避を保証しません。同じ時点・同じ建値と本数で、未決済数量だけが10倍だったらどうなるかを単純計算してみます。口座残高1,053,519円は固定し、価格差損益・スワップ・必要証拠金をそれぞれ10倍と仮定します。過去の取引をすべて10倍で行った場合の再現ではありません。
| 現状 | 数量が10倍だった場合(単純計算) | |
|---|---|---|
| 価格差の評価損益 | −39,004円 | −390,040円 |
| 未決済スワップ | +837円 | +8,370円 |
| 評価損益とスワップの合計 | −38,167円 | −381,670円 |
| 有効証拠金 | 1,015,352円 | 671,849円 |
| 必要証拠金 | 100,900円 | 1,009,000円 |
| 証拠金維持率 | 1,006% | 66.6% |
右列の有効証拠金は1,053,519−381,670=671,849円、維持率は671,849÷1,009,000×100≒66.6%です。66.6%は100%を下回りますが、50%は下回りません。ロスカットに該当するかは、その口座の商品・判定時刻・基準によって異なります。
別商品の具体例として、FXTF MT4の公式基準では通常時は50%以下、15:30〜15:45のうち約1分の証拠金率判定時刻は100%以下です(2026年9月15日確認)。この例を本記事の実口座の契約条件と同一視しないでください。相場の急変や執行までの時間差もあるため、表は実際の決済時点・損失額を予測するものではありません(維持率の見方、FXTF MT4の基準を詳しく読む)。
この右の列は、2026年8月5日時点で65.5%、7日時点で88.6%、8日時点で66.6%と動いています。設定は何も変えていません。含み損が−38,350円→−26,572円→−38,167円と往復しただけです。ロスカットまでの距離は自分では固定できず、相場が毎日書き換える——それがこの表のもう1つの中身です。
この試算で示しているのは、資金に対する数量が変わると、同じ価格時点でも維持率が大きく変わることです。買い増し間隔や保有本数による影響を否定するものではありません。
ナンピンマーチンとの違い
検索候補には「ナンピンマーチン」も出てきます。負けたら次を倍にするやり方で、これは全く別物です。
この口座は、下落の途中で数量を増やしていません。ただし正直に書くと、数量そのものは固定していません。
| 時期 | 使った数量 |
|---|---|
| 1〜2月 | 0.03ロット |
| 3月 | 0.01へ引き下げ |
| 4〜6月 | 0.01ロット |
| 7〜8月 | 0.01に0.02を追加 |
年初は0.03で始めて、3月に3分の1へ落とし、7月から少し戻しています。ただしこれは建て始める前の設定として動かしているもので、含み損が膨らんだ局面で「取り返すために倍にする」動きではありません。ここを混同すると、同じ「ナンピン」でも危険度がまったく変わります(EA化の設計)。
50銭幅にした結果、何が起きたか
参考までに、幅を50銭にした結果の実測値です。
- 決済 140本、確定 +81,399円(1件平均 +581円)
- 保有期間の中央値 8.6時間、最長 38日(保有期間の記録)
- 実際に買いが約定した日は 56日(2026年の平日のおよそ3分の1)
幅を狭くすれば約定が増え、往復も増えますが、同時に持つ本数も増えます。本数が増えれば必要証拠金が増え、維持率が下がります。幅・本数・数量・資金は連動していて、どれか1つだけを最適化することはできません。
通貨量・値幅・注文数を変えた場合の損益と必要証拠金は、FXの損益・必要証拠金計算で概算できます。
自分の口座で「請求書」を出す手順
ナンピンをやっている・やろうとしているなら、次の3つを自分の数字で出してみてください。
1. いま保有している全玉の含み損を、1本ずつ書き出す(合計だけでは判断できません) 2. 証拠金維持率を確認する。取引ツールに表示されています 3. 数量を10倍にしたら維持率がいくつになるかを計算する(含み損も必要証拠金も比例します)
3番の試算値は、利用する口座の最新の判定基準・判定時刻と照合してください。基準を上回っていても、その後の価格変動による損失が限定されるわけではありません。手順の詳しい版は再現手順の記事にあります。
よくある質問
Q. ナンピンはいつ止めればいいですか? このサイトは助言をしません。書けるのは「この口座は上限価格(140.00〜163.00円)と最大本数を決めていて、それを超えたら新規を止める設計にしている」という事実だけです。止め時を相場を見て決める形にすると、そこに判断が入り込みます。
Q. 平均取得単価はどうやって計算しますか? (各玉の建値×数量)の合計 ÷ 数量の合計です。上の11本なら約160.1円。ただし平均単価が下がっても、含み損の総額は減りません。ここを取り違えると「ナンピンすれば損が減る」という誤解になります。
Q. 両建てすれば含み損は止まりますか? 損益は固定されますが、必要証拠金とスプレッドのコストは増えます。この口座は両建てをしていないので、実測データはありません。
Q. スワップは味方になりますか? この口座はドル円の買い持ちなので受け取り側で、7か月で+4,782円でした(実額)。ただし金利環境が変われば減ることも逆転することもあります。受け取り前提で設計しないのが安全です。
まとめ
- ナンピンは強くも弱くもない。負けの確定を後ろにずらしているだけ
- この口座は確定+81,399円の裏で、−38,167円の請求書が立っている
- 保有11本のうち、高値で買った上7本だけで含み損の77%
- 勝率98.6%は腕前ではなく、負けを確定させない設計から出る会計上の性質
- 幅・本数・数量・資金は連動する。残高などを固定して未決済数量だけを10倍に置いた試算では、維持率1,006%→66.6%。ロスカット該当性は口座ごとの基準と判定時刻で異なる
- 「ナンピンマーチン」(負けたら倍)とは別物。ここを混同すると危険度が変わる
この請求書は、毎日そのまま出し続けます(運用日誌)。
更新履歴:2026年9月15日、数量10倍の試算で価格差とスワップを分離し、固定する残高と仮定を明示しました。「幅ではなく数量だけが問題」「66.6%なら50〜100%の基準に一律該当」と読める説明を訂正しました。
