この記事について
「ナンピン 最強」「ナンピン 必勝法」——実際に検索すると、この言葉が候補に並びます。
この口座がやっているのは、まさにナンピンです。50銭下がるごとに買い下がり、損切りをしない。7か月続けました。だから「最強かどうか」に、一般論ではなく明細で答えられます。
先に結論を書きます。ナンピンは強くも弱くもありません。支払いを後ろにずらしているだけで、請求書はその間ずっと立ち続けます。この記事は、その請求書を1円単位で開示するものです。
ナンピン(買い下がり)とは何か
買った値段より下がったところで、さらに買い増すことです。平均取得単価が下がるので、元の値段まで戻らなくても含み損が消える——これが仕組みの全部です。
この口座の場合はこうなっています。
- 50銭下がるごとに、買い指値を1本置く
- 買えたら、その値段の+50銭に決済指値を置く(運用の形)
- 損切り注文(S/L)は一度も置いていない
つまり「下がったら買う」を機械的に繰り返しているだけで、相場観は入っていません。
7か月の結果:見出しと請求書
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 確定損益(決済134本) | +75,542円 |
| 含み損(保有12本) | −47,358円 |
| 差し引き | +28,184円 |
決済した134本のうち、負けたのは1本だけです。勝率にすると99%を超えます。これだけ見れば「最強」に見えます。
しかし同時に、−47,358円の請求書が立っています。確定した方だけを見せれば天国、含み損だけを見せれば地獄。どちらも同じ口座の同じ日の数字です。
保有12本の中身を全部出す
「含み損−47,358円」という合計だけでは、何が起きているか分かりません。1本ずつ出します(2026年8月3日時点・市場価格156.996円)。
| 建値 | 数量 | 含み損 |
|---|---|---|
| 162.998 | 0.01 | −6,002円 |
| 162.492 | 0.01 | −5,496円 |
| 162.009 | 0.01 | −5,013円 |
| 161.505 | 0.01 | −4,509円 |
| 160.976 | 0.01 | −3,980円 |
| 160.502 | 0.01 | −3,506円 |
| 160.497 | 0.02 | −7,002円 |
| 159.501 | 0.02 | −5,010円 |
| 158.999 | 0.02 | −4,006円 |
| 157.996 | 0.02 | −2,000円 |
| 157.484 | 0.02 | −976円 |
| 157.009 | 0.02 | −26円 |
価格差の合計は−47,526円。ここに未収スワップ+168円が乗って、口座表示は−47,358円になります。
この表がナンピンの正体です。高いところで買った玉ほど深く沈み、直近で買った玉ほど浅い。上6本(160円台〜163円台)だけで−28,506円、全体の6割を占めています。介入前の高い水準で買った玉が、そのまま残っているということです(含み損の内訳)。
ナンピンが「最強に見える」仕組み
勝率99%という数字は、腕前ではありません。損切りをしなければ、負けは確定しないという会計上の性質です。
- 上がった玉は決済される → 確定利益として記録に残る
- 下がった玉は決済されない → 含み損として口座の中に残るだけ
- 集計対象が「決済されたもの」だけなら、負けはほとんど出ない
つまりナンピンは、勝ちだけを確定させ、負けを未確定のまま保有し続ける装置です。強いのではなく、成績表の作り方が偏っているだけです(勝率が高いのに増えない理由)。
ナンピンが死ぬのは「幅」ではなく「サイズ」
よく議論されるのはナンピン幅(何銭下がったら買い増すか)ですが、この口座の記録から言えるのは、致命傷になるのは幅ではなく数量だということです。
いまの状態はこうです。
- 必要証拠金 113,155円
- 有効証拠金 1,000,304円
- 証拠金維持率 884%
- 余剰証拠金 887,149円
含み損−47,358円を抱えていても、維持率884%なら余裕があります。同じ相場・同じ幅・同じ本数でも、数量が10倍だったらどうなるかを単純計算してみます。
| 現状 | 数量が10倍だった場合(単純計算) | |
|---|---|---|
| 含み損 | −47,526円 | −475,260円 |
| 有効証拠金 | 1,000,304円 | 572,402円 |
| 必要証拠金 | 113,155円 | 1,131,550円 |
| 証拠金維持率 | 884% | 50.6% |
多くの国内口座は維持率50〜100%で強制ロスカットです。つまり幅も本数もタイミングも一切変えずに、数量だけ10倍にすると、同じ相場でロスカット圏に入ります(維持率の話)。
ナンピンの生死を分けるのは相場観でも幅でもなく、資金に対する数量です。
ナンピンマーチンとの違い
検索候補には「ナンピンマーチン」も出てきます。負けたら次を倍にするやり方で、これは全く別物です。
この口座は、下落の途中で数量を増やしていません。ただし正直に書くと、数量そのものは固定していません。
| 時期 | 使った数量 |
|---|---|
| 1〜2月 | 0.03ロット |
| 3月 | 0.01へ引き下げ |
| 4〜6月 | 0.01ロット |
| 7〜8月 | 0.01に0.02を追加 |
年初は0.03で始めて、3月に3分の1へ落とし、7月から少し戻しています。ただしこれは建て始める前の設定として動かしているもので、含み損が膨らんだ局面で「取り返すために倍にする」動きではありません。ここを混同すると、同じ「ナンピン」でも危険度がまったく変わります(EA化の設計)。
50銭幅にした結果、何が起きたか
参考までに、幅を50銭にした結果の実測値です。
- 決済 134本、確定 +75,542円(1件平均 +530円)
- 保有期間の中央値 8.7時間、最長 38日(保有期間の記録)
- 買い指値を置いた日は 91日(平日の6割)
幅を狭くすれば約定が増え、往復も増えますが、同時に持つ本数も増えます。本数が増えれば必要証拠金が増え、維持率が下がります。幅・本数・数量・資金は連動していて、どれか1つだけを最適化することはできません。
自分の口座で「請求書」を出す手順
ナンピンをやっている・やろうとしているなら、次の3つを自分の数字で出してみてください。
1. いま保有している全玉の含み損を、1本ずつ書き出す(合計だけでは判断できません) 2. 証拠金維持率を確認する。取引ツールに表示されています 3. 数量を10倍にしたら維持率がいくつになるかを計算する(含み損も必要証拠金も比例します)
3番で50〜100%を割るなら、それは「相場が悪かったら終わる」設定です。手順の詳しい版は再現手順の記事にあります。
よくある質問
Q. ナンピンはいつ止めればいいですか? このサイトは助言をしません。書けるのは「この口座は上限価格(140.00〜163.00円)と最大本数を決めていて、それを超えたら新規を止める設計にしている」という事実だけです。止め時を相場を見て決める形にすると、そこに判断が入り込みます。
Q. 平均取得単価はどうやって計算しますか? (各玉の建値×数量)の合計 ÷ 数量の合計です。上の12本なら約159.6円。ただし平均単価が下がっても、含み損の総額は減りません。ここを取り違えると「ナンピンすれば損が減る」という誤解になります。
Q. 両建てすれば含み損は止まりますか? 損益は固定されますが、必要証拠金とスプレッドのコストは増えます。この口座は両建てをしていないので、実測データはありません。
Q. スワップは味方になりますか? この口座はドル円の買い持ちなので受け取り側で、7か月で+4,585円でした(実額)。ただし金利環境が変われば減ることも逆転することもあります。受け取り前提で設計しないのが安全です。
まとめ
- ナンピンは強くも弱くもない。負けの確定を後ろにずらしているだけ
- この口座は確定+75,542円の裏で、−47,358円の請求書が立っている
- 保有12本のうち、高値で買った上6本だけで含み損の6割
- 勝率99%は腕前ではなく、負けを確定させない設計から出る会計上の性質
- 致命傷になるのは幅ではなく数量。同じ相場でも数量10倍なら維持率884%→50.6%
- 「ナンピンマーチン」(負けたら倍)とは別物。ここを混同すると危険度が変わる
この請求書は、毎日そのまま出し続けます(運用日誌)。