この記事について

このサイトの記録は、すべて手作業です。MT5の注文画面で買い指値を置き、決済指値を付け、約定したらまた置き直す。それを7か月続けた結果がこの数字です。

やっていることは3行で書けます。

1. 50銭下がるごとに、1,000通貨の買い指値を置く 2. 買えたら、その値段の+50銭に決済指値を置く 3. 決済されたら、同じ値段にまた指値を置く

この3行に、判断が1つも入っていません。だからこの運用は、EA(Expert Advisor=MT4/MT5の自動売買プログラム)にしやすい形をしています。この記事は「では実際に自動化するなら何を決める必要があるのか」を、自分の明細から全部書き出したものです。

先に断っておくと、このサイトはEAの配布も販売もしていません。設計を公開するだけです。

手作業でどれだけ触っているのか

まず「自動化の余地」がどれくらいあるのかを、実際の注文履歴から出します。2026年に出した注文は351件でした。

注文の種類件数中身
buy limit(買い指値)181件下がったら買う、の本体
sell(売り)134件決済指値の約定
buy(成行買い)25件指値が間に合わなかった場面
buy stop10件上抜け狙いの試し
sell limit1件3月6日にキャンセルした1本

そして、買い指値181本のうち177本(98%)に決済指値が最初から付いています。この98%が、この運用の性格をそのまま表しています。

  • 買い指値の間隔で最も多いのは50銭
  • 決済指値の幅で最も多いのは+50銭(181本中103本)
  • 指値を置いた価格帯は140.00円〜163.00円、49の水準
  • 数量は0.01ロット(1,000通貨)が最多

さらに、注文を出した日は91日ありました。1月2日から8月3日までの平日は152日なので、6割の日に何かしら発注している計算です。判断は要らないのに、手は動かし続けている——これが自動化を考える動機になります。

EAにするなら決めなければいけない7つのこと

自分の記録から逆算すると、決める項目は7つでした。値は「この口座が実際にやっていること」です。

パラメータこの口座の実績値決めないと何が起きるか
1. グリッド幅50銭狭いと本数が増え、含み損の増え方が速くなる
2. 決済幅(T/P)建値+50銭広げると1件の利益は増えるが、決済回数が激減する
3. 1本あたりの数量0.01ロットここが全部を決める。10倍にすれば含み損も10倍
4. 発注する価格の上限・下限140.00〜163.00上限が無いと、高値でも買い続ける
5. 同時に持てる最大本数(実績は最大12本前後)上限が無いと、下落局面で資金が尽きる
6. 決済後に置き直すか置き直す置き直さないと、往復が取れない
7. 稼働させない時間帯早朝・指標時などスプレッドが広がる時間に約定すると条件が悪化する

このうち、いちばん危ないのは3番です。残り6つを完璧に決めても、数量を1桁間違えれば口座は終わります。7か月の記録から言えることは「勝ち方」ではなく、サイズと資金だけが結果を決めるということでした。

擬似コードで書くとこうなる

MQL(MT4/MT5のプログラム言語)の細かい書き方ではなく、何をするプログラムなのかの骨子です。

毎ティック:
  現在価格 P を取得

  # 1. 買い指値を並べる
  下限価格から上限価格まで、50銭刻みでループ:
     その価格に自分の指値が無い かつ 建玉も無い
     かつ 保有本数 < 最大本数
     かつ その価格 < P(=現値より下)
        → BuyLimit(価格, 0.01ロット, T/P = 価格 + 0.50)

  # 2. 決済は置かない(新規注文にT/Pを埋め込んであるため)

  # 3. 安全弁
  証拠金維持率 < しきい値 → 新規発注を止める(既存は触らない)

短いことに驚くかもしれませんが、実際この運用はこれだけです。複雑さは、コードではなく資金設計のほうにあります。

なお、決済注文を別に出すのではなく新規注文にT/Pを埋め込むのが要点です。約定と同時に出口が立つので、プログラムが止まってもポジションは出口を持ったままになります(口座に必要な条件の条件3)。

自動化で変わること、変わらないこと

項目手作業EA
指値の置き直し気づいたときに手で置く即時・漏れなし
寝ている間の約定起きるまで放置次の指値がすぐ並ぶ
発注ミス桁・方向を間違える余地がある設定が正しければ起きない
含み損同じように増える同じように増える
強制ロスカット同じ水準で来る同じ水準で来る
スワップ同じだけ発生する同じだけ発生する

自動化は作業を消すだけで、リスクは1円も消しません。この口座はいま含み損−47,358円を抱えていますが(中身)、これはEAでも一字一句同じように出ます。

むしろ自動化には固有の危なさがあります。手が疲れないので、止め時が来ないことです。手作業なら「さすがに置きすぎでは」と手が止まる場面でも、プログラムは黙って並べ続けます。上の5番(最大本数)と安全弁がある理由はここです。

バックテストで騙されないための4点

過去データで検証(バックテスト)すると、この形は綺麗な右肩上がりを描きがちです。理由は単純で、含み損が最後に清算されないからです。

1. ティックデータの品質 — 1分足から生成した価格では、ヒゲの中でどう約定したかを再現できません。50銭刻みの運用は、まさにそのヒゲで約定します 2. スプレッドの扱い — 固定値でテストすると、急変時に広がる分が消えます。この口座は介入相場でそれを実感しました 3. スワップの扱い — 持ち越し前提の運用なので、スワップを入れないテストは実態と別物です(実額) 4. テスト終了時の含み損 — 最後に残った建玉を「無かったこと」にすると、成績はいくらでも良く見えます

4番はとくに重要です。このサイトが確定損益と含み損を必ず並べて出しているのは、同じ理由です(最初に読む記事)。

動かすのに必要なもの

  • MT4またはMT5が使える口座(EAはこの2つのプラットフォーム用のプログラムです)
  • 1,000通貨から発注できること(0.01ロット単位で並べるため)
  • 新規注文にT/Pを付けられること
  • PC、またはVPS(自宅PCだと電源・回線が落ちた時点で発注が止まります)

条件の詳しい照合はこの記事にまとめてあります。

よくある質問

Q. プログラムが書けなくてもできますか? この形は、EAを使わず手作業でも成立します。現にこのサイトの記録は全部手作業です。自動化は「同じことを漏れなく速くやる」だけなので、まず手で数本置いてみて、置き直しが面倒だと感じてから考えても遅くありません。

Q. EAを買ったほうが早いのでは? そこは各自の判断ですが、この記事に書いた7つのパラメータが公開されていないEAは、中身が分からないまま資金を預けることになります。少なくとも「グリッド幅・数量・最大本数・上限価格・安全弁」がどうなっているかは確認できたほうがいいはずです。

Q. 最適なパラメータはありますか? このサイトは助言をしません。書けるのは「この口座は50銭・0.01ロットでこうなった」という記録だけです。同じ設定でも、相場が違えば結果は違います。

Q. 自動化すると税金の扱いは変わりますか? 国内FX口座であれば、手動でもEAでも申告分離課税で扱いは同じです(税制は変わることがあるため、最新は国税庁の情報でご確認ください)。

まとめ

  • この運用は判断が1つも無いので、EAにしやすい形をしている
  • 手作業では7か月で買い指値181本・発注日91日(平日の6割)を触っていた
  • EA化で決めるのは7つのパラメータ。うち決定的なのは数量
  • コードは短い。難しいのは資金設計のほう
  • 自動化しても、含み損・ロスカット・スワップは1円も減らない
  • バックテストは、最後の含み損を清算しないと嘘になる

このサイトは、その含み損を毎日そのまま出し続けています(運用日誌)。