この記事について
「損切りしないとどうなるか」は、たいてい理屈で語られます。曰く、塩漬けになる。曰く、いつか退場する。曰く、コツコツドカン。——どれも正しそうですが、実際の口座の数字で確かめた記事は多くありません。このサイトは実口座で7か月それをやってきたので、記録で答えます。すすめる記事ではありません。損切りしない運用の実際の姿を、良い面も悪い面も並べます。
この記録はOANDA証券のMT5口座で取っています。よく似た注文条件を持つ国内口座として、MT4対応のFXTF
やヒロセ通商(LION FX)
があります。 どちらも1,000通貨から発注でき、注文時に決済指値を付けられます。FXTFはMT4、ヒロセ通商は独自の取引ツールです。
まず「損切りしない」の3類型を分けます
一口に「損切りしない」と言っても、中身は3種類に分かれます。どれの話をしているかを最初に固定しないと、議論が噛み合いません。
1. 祈りの塩漬け:損切りできずに持ち、途中から「長期投資のつもり」に言い換わるもの。設計はない 2. 計画的な買い下がり:下がったら買う・どこまで買うか・サイズはいくつかを建てる前に決めてあるもの 3. 両建て・ヘッジ逃げ:反対ポジションで含み損を固定するもの(この記事では扱いません)
この口座は2番です。50銭刻みの買い指値・建値+50銭の決済指値・サイズ0.01〜0.02ロットを事前に固定して、あとは触りません(検証つきの説明)。この記事の「損切りしない」は、祈りではなく設計の話です。祈りの塩漬けがどうなるかは、この記録からは分かりません。
7か月の結果(決済を終えた分)
| 項目 | 実績(2026年1月〜8月7日・MT5サーバー日付) |
|---|---|
| 決済を終えた建玉 | 140本 |
| マイナスで終えた建玉 | 2本(3月6日 −2,510円/3月23日 −31円) |
| 日単位でマイナスの日 | 1日だけ(3月6日・−2,360円) |
| 確定損益の合計 | +81,399円 |
「7か月でほぼ負けなし」に見えます。これが損切りしない運用の表の顔です。ただし決済の記録にも2本の損失があり、勝ちだけではありません。さらに、未決済の含み損はこの決済済み140本の勝敗へ含まれていません。勝率だけで運用のうまさを測れない理由がここにあります(勝率のからくり)。
月別に並べると、こうなります。
| 月 | 確定損益 | 決済件数の傾向 |
|---|---|---|
| 1月 | +14,836円 | 相場が動き、決済が多い |
| 2月 | +11,738円 | |
| 3月 | +6,184円 | 最大の負け(−2,510円)を含む |
| 4月 | +9,300円 | |
| 5月 | +10,628円 | |
| 6月 | +537円 | ほぼ動かず、決済1件のみ |
| 7月 | +19,792円 | 介入前後の乱高下で最多 |
| 8月(7日まで) | +8,384円 | 8月3・4・6・7日の決済分 |
月別の合計は+81,399円です。2026年9月14日の再照合で、8月欄の旧表記「3日まで・+2,527円」は合計の集計時点と一致していなかったため訂正しました。1〜7月の+73,015円に、8月7日までの+8,384円を加えています(8月7日の明細に基づく日誌)。以下の含み損益は別途、8月8日時点の評価額として記載しています。
見てほしいのは6月と7月の落差です。確定利益は6月+537円、7月+19,792円と大きく異なります。この月別表だけでは、値動き・保有量・注文の位置・裁量の影響を切り分けられません。少なくとも、この期間に毎月一定額の利益が出ていたわけではありません。
裏の顔:確定しない負けは、消えていない
損は確定していないだけで、口座の中に含み損として存在し続けます。
- 2026年8月8日の保存記録では、口座全体の含み損益は−38,167円です
- 建玉別に原明細を確認できる8月3日は、12本のうち建値160〜162円台の7本で価格差損益−34,940円でした。この7本を8月8日の保有内訳として扱わないよう、日付別の内訳で分けています
- 過去には約38日保有した建玉もありました。サーバー時刻の1月23日18:48:51から3月2日15:17:38まで、37日20時間28分47秒。3,000通貨を157.496円で建てて157.418円で決済し、価格差−234円とスワップ+843円で差し引き+609円でした。旧表記「39日間」は9月15日に訂正しています(原明細の記録)
つまり7か月の実際は、「+81,399円の確定」と「−38,167円の含み損」が同時に存在している状態です。どちらか片方だけ見せれば、天国にも地獄にも見せられます。
最大の負けの正体——ルールの外に出た日
7か月で最も大きい負けがどうやって生まれたかは、明細に全部残っています。2026年3月6日(時刻はサーバー時間)の記録です。
| 時刻 | 行動 | 中身 |
|---|---|---|
| 17:41 | 売り指値158.0を設置 | 未約定のまま1分後に取消。下の成行売り2本とは別の注文 |
| 17:45 | 成行で売り 0.1ロット(157.603) | この時期の通常は0.01〜0.03なので3〜10倍のサイズ |
| 22:50 | さらに成行で売り 0.1ロット(157.869) | 逆行に対する売り増し |
| 23:58 | 2本とも同時に成行で手仕舞い(157.854) | −2,510円と+150円。差し引き−2,360円 |
買い専用のグリッドの口座で、この日だけ逆方向・裁量・成行・サイズ数倍・逆行後の増し玉・同日投げが全部そろっています。指値を置いて1分で取り消し、成行に切り替えたところから、設計の外に出ているのが分かります。
もう1本、書いておくべき記録があります。3日後の3月9日22:38にも0.1ロットの買い(157.839)を成行で建て、翌朝6:05に157.843で決済しています。結果は+40円とほぼ横ばいでしたが、これも通常の10倍サイズで、グリッドの外側の取引です。負けにはならなかったので目立ちませんが、同じ時期に2回、設計の外に出ているというのが正確なところです。
7か月・決済140本のうち、スワップを含めてもマイナスで終わったのは2本だけです。−2,510円(3月6日・ルールの外)と、−31円(3月23日・グリッド内で戻らずに決済)。この2本の損失額の合計2,541円のうち、3月6日の2,510円が約98.8%を占めます。未決済の含み損を含む比率ではありません。この記事の対象期間(2026年1月〜8月7日)に約定した売り建玉は、3月6日の2本です。取消済みの売り指値と約定した建玉は区別しています。
本当の成績は「+43,232円」——確定と含み損を合算する
ここでは、2026年8月8日時点の有効証拠金が、年始残高とその後の入金の合計からいくら増えたかを確認します。これは当時の口座の時点評価であり、今の残高や、全建玉を決済したときの受取額を保証する数字ではありません。
有効証拠金 1,015,352円 −(年始残高 372,120円 + 入金 600,000円)= +43,232円
これが、確定+81,399円から含み損−38,167円を差し引いた、この口座の7か月の「本当の成績」です。2通りの計算がぴったり一致します。ただし含み損益を含む時点評価であり、毎月確定した利益とは異なります。
- 「+81,399円稼いだ」も事実
- 「実質は+43,232円」も事実
- 確定損益の表示額は合算後の約1.9倍——だからこのサイトは両方を必ず並べます
損切りしない運用の成績を見るときは、この「合算後」を必ず確認してください。確定利益だけを見せる成績公開は、含み損という名の請求書を写していません。
7か月続いた理由(結果論として)
この期間の記録から、継続に関係したと考えられる点を2つ挙げます。ただし、1口座の結果だけで原因を切り分けたものではありません。
1. サイズが小さい。0.01〜0.02ロット、合計16,000通貨に有効証拠金100万円。介入級の急落を食らっても維持率1,006%(計算の全手順)。かっこよく言えばリスク管理ですが、実態は「最初から大きく張れない額しか張っていない」だけです 2. 買い下がりの設計で、値動きの大きかった期間にも決済があった。対象の3営業日には25本の決済が成立しました(記録)。これはその期間の観測であり、2026年全体や今後も同じ値動きになる根拠ではありません。価格が決済指値まで戻らなければ利益確定できず、下落が続けば含み損が拡大します
50銭刻みの指値という仕組みだけで成績が決まるわけではありません。この記録では、手法・保有量・資金・相場環境の効果を分離できず、手法の優劣や将来の安全性は証明できません。
「損切りする運用と比べてどうなのか」には答えられません
正直に書きます。この口座は損切りする運用を並行して走らせていないので、比較の答えを持っていません。「損切りしないほうが儲かる」とも「損切りすべきだった」とも、この記録からは言えません。言えるのは、損切りしない設計を選んだ場合に何が起きたかの記録だけです。比較で語る記事より、片側の記録として正確であることを選びます。
よくある質問
Q. 損切りしないなら、ロスカットされたら終わりでは? そのとおりです。だからこの運用の生命線は損切りラインではなくサイズです。「あと何円の下落に耐えられるか」を先に計算し、そのサイズしか持たない(概算のやり方)。耐えられる下落幅を超えたら、この口座も終わります。それを避ける魔法はありません。
Q. 何年続けば「損切りしないでも大丈夫」と言えますか? 言える日は来ません。7か月は7か月の証拠でしかなく、8か月目の保証はどこにもありません。この口座にできるのは「大丈夫と言い張ること」ではなく、「大丈夫じゃなくなった日も含めて記録を出し続けること」だけです。
Q. 真似していいですか? 判断はあなたのものです。同じ形を組む手順は全部公開していますが(再現手順)、形は同じでも、資金とサイズと精神の耐久力が違えば結果は別物になります。真似するかどうかより先に、この記事の「本当の成績+43,232円」を見て、7か月でこの金額という現実に納得できるかを確かめてください。
まとめ
- この記事の「損切りしない」は祈りではなく設計(事前に決めた買い下がり)の話
- 7か月・決済140本で負け確定は2本(−2,510円と−31円)。ただしそれは強さではなく会計の性質
- 確定+81,399円と含み損−38,167円を合算した時点評価は+43,232円。毎月の確定利益とは区別する
- 保有量と資金、相場環境を併記する。継続の原因や手法の優劣を、この1口座だけで断定しない
- 損切りする運用との比較は、この記録からは語れない。語れないことは語らない
- この先どうなるかは、運用日誌で毎日そのまま出します
