勝率は「決め方」で動く
FXの成績で真っ先に目に入るのが勝率です。90%を超える数字を見ると、それだけで強く見えます。
ただ、勝率には落とし穴があります。勝率は、負けをいつ確定させるかで大きく変わるからです。
勝率の分母に入るのは、決済が終わった取引だけです。まだ持っているポジションは、どれだけ含み損を抱えていても、まだ勝ちにも負けにも数えられていません。
つまり、利益が出たものだけを決済して、含み損が出たものを持ち続ければ、勝率は自動的に上がっていきます。腕が上がったからではなく、負けをまだ確定させていないからです。
この記録はOANDA証券のMT5口座で取っています。よく似た注文条件を持つ国内口座として、MT4対応のFXTF
やヒロセ通商(LION FX)
があります。 どちらも1,000通貨から発注でき、注文時に決済指値を付けられます。FXTFはMT4、ヒロセ通商は独自の取引ツールです。
実際に起きる形
このサイトが公開している口座の2026年の成績は、こうなっています。
- 確定利益:+83,940円
- 確定損失:−2,541円
- 決済結果:138勝2敗(決済140本)
勝率にすると98.6%です。ただし同じ時点で、決済していないポジションの含み損益は −38,167円 です(8月8日時点)。
確定した損失は2,541円ですが、まだ確定していない損失が38,167円ある。勝率98.6%という数字は、この38,167円を一切見ていません。
これは特別なことではなく、損切りをしない運用をすれば誰の口座でもこうなります。数字がうそをついているのではなく、勝率という指標がそもそも未確定分を見ない設計なのです。
勝率が高い口座で、実際に何が起きているか
この口座の数字を時間軸で並べると、勝率という指標が何を見ていないかがはっきりします。
| 時点 | 勝率 | 確定損益 | 含み損益 |
|---|---|---|---|
| 7月30日(急落前) | 99%超 | 約+64,000円 | 小さい |
| 7月31日(介入公表日) | 99%超 | +74,500円 | 拡大中 |
| 2026年8月7日時点 | 98.6%(ほぼ変わらず) | +81,399円 | −38,167円 |
勝率はこの間ほとんど動いていません。含み損が2万円以上に膨らんだ期間に、勝率だけは無反応でした。これは異常ではなく、勝率という指標が「決済したものだけ」を数える設計だからです。指標が壊れているのではなく、そういう指標なのです。
勝率が意味を持つ条件
では勝率は全く無意味かというと、そうではありません。次の条件がそろえば、勝率は使える指標になります。
1. 損切りルールがあり、それが守られている(負けが確定するので、分母に負けが入る) 2. 保有ポジションが常にゼロに近い(決済済みが実態とほぼ一致する) 3. 平均利益と平均損失が併記されている(勝率が高くても損大利小なら赤字になる)
逆に言うと、この3つが示されていない勝率は、評価に使えないというより、そもそも何を測ったのか分からない数字です。SNSで勝率だけを掲げるスクリーンショットを見たら、この3点を探してみてください。
ではどこを見るか
勝率のかわりに、次の3つをセットで見ると実態がつかめます。
1. 有効証拠金
有効証拠金=残高+含み損益。いま全部のポジションを決済したら手元に残る金額です。口座の現状に一番近い数字がこれです。
2. 平均利益と平均損失の差
勝率が高くても、1回の負けが1回の勝ちより大きければ、取引全体では減っていきます。
- 平均利益 × 勝った回数
- 平均損失 × 負けた回数
この2つを比べると、勝率だけでは見えない形が出てきます。
3. プロフィットファクター
プロフィットファクター = 総利益 ÷ 総損失
1.0を超えていれば、確定分の合計はプラスです。ただしこれも確定した取引だけで計算されるので、勝率と同じ弱点を持っています。含み損を抱えたまま良い数字が出ることがあります。
だから、プロフィットファクターを見るときも、同じ時点の含み損益を横に置く必要があります。
4. 「本当の成績」=有効証拠金の増加
いちばん誤魔化しの効かない見方は、投じた資金に対して有効証拠金がいくら増えたかです。この口座なら——
有効証拠金 1,015,352円 −(年始残高 372,120円 + 入金 600,000円)= +43,232円
確定+81,399円の裏で、実質はこの金額です(計算の詳細)。勝率98.6%・確定+8.1万円・実質+4.3万円——全部同じ口座の同じ日の数字です。どれを見出しにするかで印象が変わるので、このサイトは全部並べます。
この指標の弱点は、この口座に限らない
念のため書いておくと、これはこの口座を批判するための話ではなく、すべての成績公開に共通する構造の話です。
- 損切りをする運用でも、含み損を抱えたまま「今月の確定損益」を出せば同じ問題が起きます
- 株式や投資信託でも同じで、売却益だけを並べて評価損の銘柄に触れないなら構造は変わりません
- 自動売買・EAの成績表示も、多くは決済ベースです。含み損の推移まで出しているものは多くありません
だからこのサイトは、確定損益を出すときは必ず同じ画面に含み損益を置くという形式にしています(トップページ)。形式で縛らないと、書き手のほうが都合よく忘れるからです。
よくある質問
Q. 勝率が低いほうがいい、という話ですか? 違います。勝率の高低に良し悪しはなく、勝率という数字だけでは運用の実態が測れないという話です。損切りする運用では勝率40%でも利益が出ることがありますし、この口座のように損切りしない運用では99%でも実質はわずかです。
Q. プロフィットファクター(PF)なら大丈夫ですか? 同じ弱点があります。PFは「総利益÷総損失」で、どちらも確定した取引だけの数字です。含み損を抱えたままなら、PFはいくらでも高く出ます。この口座の2026年のPFも高い数字になりますが、それを看板に掲げないのはこの理由です。
Q. じゃあ何を信じればいいのですか? 「信じる指標」を探すより、指標が何を数えていないかを確認するほうが確実です。勝率は未確定分を数えていない。確定損益も同じ。PFも同じ。この3つが同じ弱点を共有していると分かれば、残るのは有効証拠金と含み損益、そして入金額の3つになります。
Q. 含み損を出している人が信用できない、ということですか? まったく逆です。含み損は運用の正常な一部で、出ること自体は普通です(含み損の中身)。問題は含み損があるのに見せていないことで、見せている記録のほうがむしろ信用の材料になります。
この記事の内容は、損切りしない7か月の全記録の数字とセットで読むと具体的になります。
まとめ
- 勝率は「負けをいつ確定させるか」で動く。腕とは別の要素で上下する
- 損切りをしない運用では、勝率は自然に高くなる
- 確定損益・勝率・プロフィットファクターは、すべて未確定分を見ていない
- 実態を知りたいなら、有効証拠金と含み損益を必ず並べて見る
他人の成績を見るときも、自分の口座を見るときも、同じです。良い数字が出ている場所ではなく、その数字が何を数えていないかを見ると、形がわかります。
