結論:両建てはグリッドの必須要素ではない
「グリッドトレード」と検索すると、買いと売りの注文を両方並べる両建て型の解説が多く出てきます。そのため「グリッドをやるなら両建てが前提」と思われがちですが、そうではありません。
この口座は、50銭刻みの買い指値だけを並べる買いのみのグリッドを2026年1月から続けています。8月16日時点で戦略対象の決済は144本。内訳は買い142本・売り2本で、売り2本はグリッドの一部ではないルール外の注文でした(後述)。さらに全建玉の保有期間を突き合わせた結果、買いと売りを同時に持っていた時間は一度もありません。両建てなしでグリッドは成立する、というのがこの口座の記録から言えることです。
この数字は公開している統計データと同じ集計から出しています。
この記録はOANDA証券のMT5口座で取っています。よく似た注文条件を持つ国内口座として、MT4対応のFXTF
やヒロセ通商(LION FX)
があります。 どちらも1,000通貨から発注でき、注文時に決済指値を付けられます。FXTFはMT4、ヒロセ通商は独自の取引ツールです。
両建てグリッドとはどういう仕組みか
一般に両建て型のグリッド(リピート系)は、一定の値幅ごとに買い注文と売り注文の両方を置きます。
- 相場が下がれば買いが約定し、反発で利益確定
- 相場が上がれば売りが約定し、反落で利益確定
- レンジ相場なら上下どちらに動いても細かい利益を拾える
狙いは「方向を当てなくてよい」ことです。ただし、レンジを抜けて一方向に動いた場合は、逆側のポジションに含み損が積み上がります。買いのみのグリッドが下落で含み損を抱えるのと同じことが、両建て型では上抜けでも下抜けでも起きる構造です。方向を当てない代わりに、含み損が発生する場面が両側に増える。この交換条件を理解しないまま「両方に注文を置けば安心」と考えるのは危険です。
なお、片側に絞る場合も買いである必要はありません。売りだけのグリッドも仕組みとしては同じように成立します。この口座では、後述のとおり買いのスワップが受け取りとして積み上がっており、買い側を続ける判断材料の一つになっています。
両建てにすると増えるもの
両建てを検討するなら、先に増えるコストと管理項目を確認したほうがいいです。
スプレッドが両方向にかかる。 買いにも売りにも取引コストが発生します。値幅の小さいグリッドほど、1回あたりの利幅に対するスプレッドの比率は重くなります。
スワップの受け払いが両方向に発生する。 買いと売りではスワップの受け払いが逆になり、多くの場合、受け取りと支払いは同額ではありません。両建てで長く保有すると、その差が日々積み上がります。この口座の実録で言うと、8月16日時点の確定損益+89,871円のうち+4,970円はスワップの受け取りです。買いのみだからこの項目はプラスで積み上がっていますが、売りを同時に持てば逆向きの支払いが発生していたことになります。
必要証拠金の扱いが会社ごとに違う。 両建て時の証拠金を「大きい方のみ」とする会社もあれば、そうでない計算の会社もあります。ここは一律に言えないので、使う会社の公式ページで必ず確認してください。
注文の管理数が倍になる。 買いのグリッドと売りのグリッドを別々に管理することになり、決済し忘れや設定ミスの余地も増えます。
この口座の記録:売りは2本だけ、両建て状態はゼロ
この口座の2026年の全記録(8月16日時点・決済145本と保有9本)から、売りに関する事実を並べます。時刻はMT5のサーバー時間です(時刻の読み方)。
| 項目 | 記録 |
|---|---|
| 戦略対象の決済 | 144本(数量を誤発注した1本は別枠で管理) |
| うち買い | 142本 |
| うち売り | 2本(いずれも2026年3月6日) |
| 売り2本の合計損益 | −2,360円(スワップ・手数料込み) |
| 買いと売りの同時保有 | 0回 |
売り2本の中身は次のとおりです。
| 建て時刻 | 建値 | 決済値 | ロット | 損益 |
|---|---|---|---|---|
| 3月6日 17:45 | 157.603 | 157.854 | 0.10 | −2,510円 |
| 3月6日 22:50 | 157.869 | 157.854 | 0.10 | +150円 |
2本とも同じ日の23:58に同時に手仕舞いしています。これは両建てのヘッジではなく、ルールの外に出た裁量の売りでした。経緯の時系列は損切りしない7か月の記事で公開しています。
「両建て状態がゼロ」は感覚ではなく、決済済み145本の建玉期間と保有中9本の建て日を全件突き合わせて確認しました。売り2本を持っていた約6時間の間、この口座に買い玉は1本もありませんでした(直前の買いは3月2日までにすべて決済済み)。この口座は両建てを一度も使っていません。
両建てで含み損を「固定」する前に
両建てのもう一つの使われ方が、含み損のポジションに反対売買を当てて損益を固定する「ヘッジ逃げ」です。ナンピンの実録記事でも触れましたが、ここは冷静に見たほうがいいです。
固定した瞬間に損失が消えるわけではありません。買いと売りを同時に持てば評価損益の変動は止まりますが、その時点の含み損は確定していないまま残り続けます。そして両建てを解消するには「どちらをいつ外すか」という、元の問題より難しい判断が必要になります。外すタイミングを当てられるなら、最初から損切りか利確をすればいいはずです。
つまり両建てによる固定は、損失への対処を先送りしながらコストを払い続ける選択になりやすい。この構造を理解した上で使うかどうかを決めるべきで、「含み損が怖いからとりあえず両建て」は順序が逆だと考えています。
買いだけの設計で含み損とどう付き合っているか
では両建てを使わないこの口座は、含み損にどう対処しているのか。答えは「小さく持って、戻りを待つ」です。
- 1回の数量は0.01〜0.03ロット(1,000〜3,000通貨)が中心。8月16日時点の戦略144本のうち86本が0.01ロット
- 下がったら50銭刻みで買い、上の節目に利確の指値を置く
- 損切りはせず、含み損は静観する
保有期間の実測(8月16日時点)は、中央値8.7時間・平均55.6時間・最長は約38日。半分は当日中に決済まで届き、一部の長い持ち越しが平均を引き上げる分布です(詳細は保有期間の実録)。
含み損が大きく膨らんだ場面もそのまま記録しています。日米協調介入があった2026年8月3日18:31のスナップショットでは評価損は−47,706円まで拡大しました。それを両建てで固定せず、小さいロットのまま戻りを待ち、8月16日11:03時点の含み損は−15,793円です。これは「待てば戻る」という主張ではなく、両建てを使わずに含み損の拡大と縮小を通過した一つの実例として置いておきます。逆に言えば、戻らない相場が続けばこの方法の含み損は膨らみ続けます。それを支えるのが小さいロットと証拠金の余裕で、この設計の全体はグリッド運用の形にまとめています。
両建てグリッドを検討する人の確認表
1. レンジを抜けたとき、逆側の含み損をどこまで許容するか決めたか 2. 買い売り両方のスプレッド負担を、1グリッドの利幅と比べたか 3. スワップの受け払いの差を、想定保有期間で計算したか 4. 両建て時の必要証拠金の計算方法を、公式ページで確認したか 5. 両建てを「外す条件」を先に文章にできるか 6. そもそも片側だけのグリッドで目的を果たせないか
6番が実はいちばん重要だと考えています。方向を片側に絞れば、ここまでに挙げたコストと判断の半分は最初から発生しません。
まとめ
- 両建てはグリッドトレードの必須要素ではない
- この口座は買いのみのグリッドで、8月16日時点の戦略決済144本のうち買い142本
- 売り2本はルール外の裁量で、両建てのヘッジではない
- 全建玉の期間を突き合わせた結果、買いと売りの同時保有は一度もない
- 両建ては、スプレッド・スワップ差・証拠金・管理数が増える
- 含み損の両建て固定は、損失を消さずに「外す判断」を先送りする構造
- この口座は小さいロットと損切りなしの静観で含み損と付き合っている
