結論:グリッドは「どちらに向かって買うか」で性格が変わる
グリッドトレードは、一定の値幅ごとに注文を並べる手法の総称です。同じ「並べる」でも、価格が進む方向を追いかけて買う順張り型と、下がってきたところを迎えにいく逆張り型では、注文の置き方も、含み損が出る場面も、まったく違います。
この口座は、50銭刻みの買い指値を下に並べる逆張り型を2026年1月から続けています。8月16日時点で戦略対象の決済は144本。建値が50銭刻みから2銭以内に収まったものが105本(72.9%)で、「下がったら決まった価格で買う」が記録として確認できる運用です。数字は公開している統計データと同じ集計から出しています。
どちらの型が優れているという話ではありません。それぞれ何と引き換えに何を得ているのかを、仕組みと実録で分けて書きます。
具体例で言うと、いまドル円が159円ちょうどだとして、順張り型は159円50銭・160円ちょうど…と上に買いを並べ、逆張り型は158円50銭・158円ちょうど…と下に買いを並べます。並べる方向が逆なだけに見えて、約定する場面・含み損になる場面・向いている相場が全部逆になります。
この記録はOANDA証券のMT5口座で取っています。よく似た注文条件を持つ国内口座として、MT4対応のFXTF
やヒロセ通商(LION FX)
があります。 どちらも1,000通貨から発注でき、注文時に決済指値を付けられます。FXTFはMT4、ヒロセ通商は独自の取引ツールです。
順張り型:上がったら買い、さらに上で売る
順張り型のグリッドは、現在の価格より上に買い注文を並べます。相場が上昇していくと注文が順に約定し、それぞれさらに上の価格で利益確定を狙います。
- 強い上昇トレンドに乗れれば、約定と決済が連続する
- 「押し目を待っていたら乗り遅れた」が起きにくい
- 代わりに、上げが続かず反落すると、高い価格で買った玉が連鎖的に含み損になる
順張り型がいちばん苦手なのは、上下動を繰り返すレンジ相場です。上に抜けたと思って約定した直後に戻される、が繰り返されると、買値の高い玉ばかりが積み上がります。
逆張り型:下がったら買い、戻りで売る
逆張り型のグリッドは、現在の価格より下に買い注文を並べます。相場が下がると注文が順に約定し、反発したところで利益確定します。
- レンジ相場や、下げても戻る相場と相性がいい
- 高値を追いかけないので、買値は常に「下がってきた価格」になる
- 代わりに、下げ続ける相場では約定した玉が順に含み損になる
この口座が抱えてきた含み損は、すべてこの構造から来ています。下がる局面で買うのだから、買った直後は含み損から始まるのが普通で、それが戻るまでの時間を耐えられるかが設計のすべてになります(含み損との付き合い方)。
MT5の注文タイプで言うと
2つの型の違いは、MT5の注文タイプの違いとしてそのまま現れます。OANDA公式の新規注文パネル解説にある定義を借りると、次の対応になります。
| やりたいこと | 使う注文タイプ | 公式の定義 |
|---|---|---|
| 下がったら買う(逆張り型) | Buy Limit | 現在の価格よりも低い価格での買い注文 |
| 上がったら買う(順張り型) | Buy Stop | 現在の価格よりも高い価格での買い注文 |
| 高値を抜けた後の押し目を買う | Buy Stop Limit | 指定した価格を上回った場合に有効となる指値の買い注文 |
タイプと価格の関係を逆に入れると、意図した注文になりません。「下で買いたいのにBuy Stopを選んでいた」は型の取り違えそのものです。発注画面の具体的な手順は指値注文のやり方にまとめています。
この口座の実録:逆張り型は記録にどう出るか
逆張り型を7か月半続けると、明細には次のような形が残ります(8月16日時点)。
建値が刻みに揃う。 戦略対象144本のうち105本(72.9%)は、建値が50銭刻みから2銭以内でした。相場の勢いを見て買うのではなく、あらかじめ置いた価格で買っているためです。残りの約27%には、刻みから外れた価格で建てた玉も含まれます。全部が機械のように揃っているわけではありません。
下がった日にまとまって約定する。 相場が大きく下げた7月30日〜31日の2日間には、並べていた買いが33本約定しました。いま保有している9本のうち8本も、この2日間に建ったものです。逆張り型の「買う日」は自分で選べず、相場が下がった日がそのまま買う日になります。
決済も集中する。 反発局面では、下で買った玉の利益確定が連続します。7月31日は1日で14本を決済し(+10,425円)、これは2026年で最多の決済数でした。2番目に多い日でも9本なので、突出しています。1日の全明細は7月31日の振り返りにあります。約定のない日が続き、動いた日に取引が固まる。この波の大きさは、毎日コツコツ約定するイメージとはかなり違います。
利確の置き場所まで刻みで決まる。 保有中の9本の利益確定指値は、9本すべてが建値の上の50銭刻みに置かれています(建値との差は0.49〜0.52円)。たとえば158.997円で建った玉の利確は159.500円です。買う価格だけでなく売る価格も先に決まっているのが、この型の記録上の特徴です。
買いから始まり、決済指値で終わる。 保有中の9本にはすべて利益確定の指値が付いており、損切りの逆指値は付けていません。この「損切りをしない」部分はグリッドとは別の設計判断で、その意味と代償は損切りしない7か月の記事に正直に書いています。
それぞれの弱点を並べる
| 順張り型 | 逆張り型 | |
|---|---|---|
| 苦手な相場 | レンジ・反落 | 一方向に下げ続ける相場 |
| 含み損が出る形 | 高値で買った玉が反落で沈む | 下で買った玉がさらに下がって沈む |
| 買値の性質 | 追いかけるほど高くなる | 待つほど安くなるが、待っても来ないことがある |
| 機会損失 | 反落相場で削られる | 上昇し続ける相場では買えない |
逆張り型の「待っても来ないことがある」は実感があります。相場が上に行ってしまえば、下に並べた指値は約定せず、取引のない日が続きます。この口座の日誌に取引ゼロの日が多いのは、この構造によるものです。
この記録から言えないこと
正直に書いておくと、この口座に順張り型グリッドの実測データはありません。この記事の順張り型の説明は、注文の仕組みから言える構造の話であって、実際の成績比較ではありません。「逆張り型のほうが儲かる」という主張をするためのデータを、この口座は持っていません。
また、この口座の逆張り型が続いているのは、下げても戻る相場が続いてきたからでもあります。同じ設計でも、戻らない相場が続けば含み損は積み上がる一方になります。型の説明と、その型が今後も機能するかは、別の問題として読んでください。
どちらを選ぶかの前に確認すること
1. 想定している相場はトレンドか、レンジか。それが外れたときにどちらの含み損なら耐えられるか 2. 含み損に耐える資金設計(数量と値幅)を先に決めたか 3. 注文タイプ(Buy Limit / Buy Stop)と価格の関係を正しく選べるか 4. 約定しない期間・約定が集中する日があることを受け入れられるか 5. 損切りの有無を、型の選択とは別に決めたか
グリッドの型は入口の違いにすぎず、資金が尽きれば型に関係なく続けられません。数量の決め方はロット計算の記事が使えます。
まとめ
- グリッドトレードには、上を追う順張り型と、下で待つ逆張り型がある
- MT5では順張り型がBuy Stop、逆張り型がBuy Limitに対応する
- 順張り型は反落とレンジに弱く、逆張り型は下げ続ける相場に弱い
- この口座は逆張り型で、8月16日時点の戦略決済144本のうち105本が50銭刻み±2銭の建値だった
- 下落局面では約定が集中する。保有9本のうち8本は7月30日〜31日に建った
- 型の選択と、損切りの有無・資金設計は別の判断として分けて決める
