グリッドトレードとは何か
グリッドトレードとは、一定の値幅ごとに注文を格子(グリッド)状に並べ、約定と利益確定を機械的に繰り返す手法です。「この後上がるか下がるか」を1回ごとに予想する代わりに、「価格はいずれこの帯を通る」ことに賭けて、通り道に注文を置いておきます。
たとえばこの口座は、ドル円の現在価格より下に50銭刻みで買い指値を並べ、約定した玉それぞれに50銭上の利益確定指値を付ける、という形を2026年1月から続けています。売買の判断は注文を置いた時点で終わっていて、あとは相場が注文に触れるかどうかだけです。
この記事は入門の整理です。個別のテーマは、この口座の運用の形、両建ての要否、順張り型と逆張り型の違いにそれぞれ分けて書いています。
この記録はOANDA証券のMT5口座で取っています。よく似た注文条件を持つ国内口座として、MT4対応のFXTF
やヒロセ通商(LION FX)
があります。 どちらも1,000通貨から発注でき、注文時に決済指値を付けられます。FXTFはMT4、ヒロセ通商は独自の取引ツールです。
仕組み:予想を「配置」に置き換える
普通の裁量トレードは「いつ・いくらで買うか」を毎回判断します。グリッドトレードはこの判断を最初の設計に寄せます。
1. 範囲を決める(どの価格帯に注文を並べるか) 2. 値幅を決める(何銭ごとに置くか) 3. 数量を決める(1本あたり何通貨か) 4. 利確幅を決める(約定した玉を何銭上で確定するか)
設計が終われば、日々やることは注文の補充と記録だけになります。実際、この口座の保有9本の利益確定指値は、9本すべてが建値の上の50銭刻みに置かれています(2026年8月16日時点)。買う価格も売る価格も、相場を見て決めたものではなく、設計から機械的に決まったものです。
種類の整理:3つの軸で分かれる
グリッドトレードと呼ばれるものは、次の3つの軸の組み合わせで性格が決まります。
① 片側だけか、両建てか。 買いのグリッドだけ(または売りだけ)を並べる型と、買い売り両方を並べる両建て型があります。両建て型はレンジの上下両方を取りにいく代わりに、スプレッド・スワップ・証拠金の負担が両方向に発生します。この口座は買いのみで、両建てを使わない理由と検証は別記事にまとめています。
② 順張りか、逆張りか。 現在価格より上に買いを並べて上昇を追う順張り型と、下に並べて下落を迎える逆張り型があります。MT5の注文タイプではBuy StopとBuy Limitの違いに対応します(順張りと逆張りの整理)。
③ 手動か、自動か。 注文の設置と補充を手で行うか、EA(自動売買プログラム)やリピート系と呼ばれる自動売買サービスに任せるかの違いです。仕組み自体は同じで、変わるのは補充の手間と、システム利用のコストです。この口座は手動で、EA化する場合の設計は検討記録として公開しています。
リピート系サービスとの関係
「リピート系」と呼ばれる自動売買サービスの多くは、ここまで書いた設計(範囲・値幅・数量・利確幅)と注文の補充を自動化したものです。つまり、サービスを使うかどうかにかかわらず、設計項目そのものは同じです。
違いが出るのは、補充の手間と、取引条件(スプレッドや手数料)です。自動化の便利さの対価がどこに乗っているかはサービスごとに違うため、使う場合も「同じ設計を手動でやったら何が変わるか」を理解してから選ぶと、コストの意味が読めるようになります。この記事の範囲では、どのサービスが良い悪いという評価はしません。
メリット:何が楽になるのか
- エントリーの判断が消える。 迷い・追いかけ・飛び乗りが構造的に起きません
- 記録が機械的になる。 どの価格で買いどの価格で売るかが先に決まっているので、後から検証できる記録が自然に残ります
- 相場に張り付かなくてよい。 注文はサーバー側に置かれるため、画面を見ていない時間にも約定と利確が進みます
この口座の実測では、戦略対象144本のうち105本(72.9%)が50銭刻みから2銭以内の建値でした(8月16日時点・公開している統計データ)。「決めた価格で買う」が実行できているかは、こうして建値の分布で検証できます。
デメリット:構造的に避けられないもの
検索すると「ほったらかしで稼げる」という紹介も見かけますが、グリッドトレードのデメリットは設計でゼロにはできません。
含み損が出る前提の手法である。 逆張り型なら下がった玉を持ち続け、順張り型なら反落した玉を持ち続けます。約定した直後の玉が含み損なのはこの手法の通常運転で、それが嫌なら向いていません。この口座も含み損の実額を、確定損益と同じ画面に並べてそのまま公開しています(含み損との付き合い方)。
一方向に動き続ける相場に弱い。 並べた範囲を超えて動かれると、約定した玉が全部含み損側に取り残されます。範囲の外に出た相場には打つ手がありません。
資金設計を誤ると強制ロスカットで終わる。 値幅と数量を欲張るほど、想定外の下落での必要資金が跳ね上がります。損失は預けた証拠金の範囲では済まない場合もあります。数量の決め方はロット計算の記事で確認できます。
取引コストは毎回かかる。 約定のたびにスプレッドを払います。値幅(利確幅)が小さい設計ほど、利益に対するコストの比率が重くなります。
待つ時間が長い。 この口座の保有期間は中央値8.66時間ですが、最長は約38日です。下げた2日間(7月30日〜31日)に買いが33本まとまって約定する一方、相場が上に行けば何日も取引ゼロが続きます。毎日コツコツ利益が出る手法ではありません。
「必ず勝てる」ではない、を最初に
グリッドトレードは、勝率が高く見えやすい手法です。損切りをしない設計なら、負けが確定しないぶん勝率の数字は上がります。しかしそれは損失が含み損として画面の外に積まれているだけかもしれません。
この口座が勝率や利益と同じ画面に含み損を必ず並べて公開しているのは、この手法の数字が片面だけでは判断できないからです。判断の材料は統計データのページにJSON・CSV付きでまとめています。
実録つきでよくある質問に答える
Q. いくらから始められますか? 数量の設計次第です。この口座の1回の数量は0.01〜0.03ロット(1,000〜3,000通貨)が中心で、1,000通貨に必要な実額は実録の記事にまとめています。
Q. 本当にほったらかしでいいですか? 注文の補充と資金の監視は残ります。この口座は手動なので、決済された分の指値を並べ直す作業を続けています。「置いたら終わり」ではありません。
Q. 勝率はどれくらいになりますか? この口座の8月16日時点の勝率は98.6%(145本中143勝)です。ただし前述のとおり、損切りをしない設計では負けが確定しにくく勝率は高く出ます。この数字だけで手法を評価しないでください。含み損・保有期間とセットで見る必要があります。
始める前の確認表
1. 型を決めたか(片側か両建てか・順張りか逆張りか・手動か自動か) 2. 範囲・値幅・数量・利確幅を数字で書き出したか 3. 範囲の端まで逆行した場合の含み損と必要証拠金を計算したか 4. その含み損を見続けられるか(日数の目安は保有期間の実測が参考になります) 5. 損切りの有無を決めたか。決めた理由を説明できるか
まとめ
- グリッドトレードは、一定の値幅ごとに注文を並べて約定と利確を繰り返す手法
- 片側か両建てか・順張りか逆張りか・手動か自動か、の3軸で型が決まる
- エントリー判断が消え、記録が機械的になるのがメリット
- 含み損が出る前提・一方向相場に弱い・資金設計を誤ると退場、が構造的なデメリット
- 勝率の高さは損切りをしない設計の会計的な性質でもあり、含み損とセットで見る
- この口座は買いのみ・逆張り・手動の型で、全記録を数字のまま公開している
